税理士のワークスタイル
税理士と一言でいっても、その働き方は実にさまざま。独立開業したり、地元にUターンしたり、子育てを優先するなど、彼らがその働き方を選択した理由は何だったのでしょうか。
網川仁美 関東信越税理士会2020年登録
所属税理士
現在は研修講師をしながら。ライフステージに合わせた働き方を。
税理士登録に必要な実務経験を積むため現在の税理士事務所へ入所しました。登録後も、出産・育児を視野に入れていたため、全ての責任を一人で負う個人事業主より負担が少ないと考えました。実際、私の事務所では基本的に各クライアントに対し一人で担当しているため、時間の調整がしやすく、所属税理士ではありますが個人事業主のような働き方が可能となっています。産休前には、顧客訪問日を同じ日にまとめ、事務作業だけの日は在宅勤務に。結果、出勤は週に3〜4日程度になっていました。

育休中の現在は、以前から興味のあった研修講師として外部へ出向き、スポットで新人職員研修や大学での講義を行うなど、学びのある貴重な機会をいただいています。税理士は資格を活かして自分の働き方を選ぶことができ、ライフステージの変わりやすい女性に向いている職業と言えると思います。
女性ならではの働き方
所属する事務所の所長が女性のため、女性の経営者からご依頼いただくことが多いです。また、男性の経営者の場合でも、奥さまが経理担当をしていることから女性税理士を希望するという方もいらっしゃいます。
自身が目指す働き方
仕事と子育ての両立です。現在は育休中のため、子育てが中心ですが、子どもの成長とともに少しずつ業務を拡大し、ゆくゆくは自身のクライアントを増やしていきたいと考えています。
太田勇輝 東京税理士会2014年登録
開業税理士
独立開業しストレスフリー。お客さまの気持ちがわかる税理士に。
所属税理士から社員税理士※3を経て、独立開業しました。社員税理士のときは、上からの指示業務に職員への指導、プレイヤーとしての業務にと忙しく、生活のほぼ全てを仕事が占めていました。やりがいはありましたが、自分にとっての幸せは何かを問い直し、独立開業を選択。何かを新しく試したり、自分がやってみたい方に好きに舵取りができるのは、自分に向いているように思います。組織作りなど社内のことに悩まなくていいのはストレスフリーですね。思考をお客さまのことと、自身の人生に集中して充てることができます。

逆に、自分しかいないため事業経営について迷っても身近に相談できる人がおらず、その点については悩みどころですが、経営者であるお客さまと同じ状況になることで顧客理解に寄与できると考えれば、それもまたメリットかもしれません。
性別による働き方の違い
女性は仕事と育児や家事の両立のために、在宅勤務を多く取り入れたり、業務の時間を明確にしている人が多い印象。男性は、仕事に全力派or趣味・育児重視派かで、両極端と感じます。
自身が目指す働き方
知り合いの方で、十分な収入を得ながらも、業務を効率化し午後3時にはサーフィンを楽しむ開業税理士がいます。私もお客さまに貢献しながら、私生活ももっと充実させたいですね。
國分智弘 沖縄税理士会2023年登録
所属税理士
大好きな地元にUターン。今は2人の子育てを優先。
大学卒業後は地元沖縄での就職を希望していましたが、地元には大企業が少なく、将来的なことを考えると手に職をつけたいと思い税理士を目指しました。現在は父の税理士事務所に入所し、2人の子どもの子育てをしながら、なるべく9時から17時の時間帯で働いています。朝は子どもを幼稚園に送り、特にお客さまとの約束がなければ中抜けしてお迎えに行ったりとフレキシブルに動けますし、可愛い盛りの子どもとの時間を確保できるのは嬉しいです。とはいえ、日常業務とは別に、税理士としての資質を向上させるための勉強の時間も確保せねばならず、綿密なスケジュール管理がとても重要です。

また、Uターンだからこそ、気のおけない仲間や協力し合える家族が近くにいるのは心強いですね。仕事面でも、知り合いからお客さまの紹介があったりと、地元で働くメリットは多いと思いますよ。
性別による働き方の違い
男性だからといって仕事だけやればいい、という時代ではないのかなと思います。子どもに手がかかる今しっかり育児に向き合えるのは、時間の融通が利きやすいこの仕事だからこそのメリットです。
自身が目指す働き方
現在は、もう少し時間があればやりたいと思うことを後回しにしているので、子育てが落ち着いてきたらフルアクセルで仕事に打ち込みたいです。
笠原奈美子 東京地方税理士2004年登録
開業税理士
家庭も仕事もあきらめたくない私にピッタリの仕事。バランスを最重視。
税理士である父と、税理士志望だった母の勧めもあり、税理士を志しました。女性がキャリアを断念することは、母の時代には当たり前の風潮でしたが、やはり後悔は少なからずあったとのこと。それを聞いて、母の分も夢を叶えたいと思ったのを記憶しています。

税理士になり子どもを出産。子どもが小さい頃は仕事と育児の両立は大変でしたが、夫や母のサポートのおかげでなんとか乗り切れました。その当時は周りの環境や自分自身に負けたくない一心で、仕事量をセーブすることはあまりなかったですね。
父より代替わりし開業税理士になった現在は、ワークライフバランスが大事だと常々感じています。家族の健康のために、週末には一週間分のメイン料理を作り置き。料理に没頭するのも良い気分転換の一つです。長い税理士歴の中で今が一番、自分らしい働き方ができているような気がします。
女性ならではの働き方
性別を活かした仕事や働き方というよりも、性別関係なく、税理士は「個性」を活かした仕事や働き方ができると考えています。
自身が目指す働き方
お客さまへ真摯に向き合い適切なサービスを提供することを前提に、仕事とプライベートの時間を分けた健やかな税理士生活を目指しています。
※1 所属税理士…税理士事務所や税理士法人に雇用され、税理士業務を行う人。所属先の承諾を受ければ、自分で見つけた顧客先は自分の顧問先にすることができる。
※2 開業税理士…自分で税理士事務所を開設し、所長として独立して活動する。自分以外の税理士(所属税理士)を置くこともある。
※3 社員税理士…「会社」のような形態をとった税理士法人を経営する税理士。顧客と直接契約を結ぶ開業税理士に対して、組織で顧客に対応し、報酬は税理士法人から給与として得る。
にちぜいくん
データで見る税理士
にちぜいくん
現役で活躍する税理士はどんな人たちなのか。データの数字から、実際の税理士の姿を見てみましょう。
年齢層
税理士の高齢化が進んでいるとともに、若い経営者が増えているため、若手税理士の活躍が期待されています。
※ 32,747人を対象とした税理士実態調査より(2014年)
従事年数
ベテランが活躍している点からも、長く続けられる職業であることがわかります。
※ 32,747人を対象とした税理士実態調査より(2014年)
男女比率
※()内は税理士登録者総数。日本税理士会連合会 税理士登録者より(2023年3月末)
女性税理士の登録数推移
ライフイベントに合わせて柔軟な働き方ができるため、女性の割合が年々高まってきています。
※()内は税理士登録者総数。日本税理士会連合会 税理士登録者より(2023年3月末)
にちぜいくん