税理士法改正が実現~時代の変化に対応し、未来を創る制度の構築に向けて(会長コメント)

2022年3月22日お知らせ

2022年3月22日
日本税理士会連合会
会長 神津 信一

 税理士法の改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律案」が、3月22日の参議院本会議で可決・成立いたしました。

 税理士制度の淵源である税務代理士法の制定から80年という節目の年に税理士法改正が実現したことは、誠に感慨深いものがあります。関係国会議員並びに行政当局には、その都度適切なご助言、ご指導を賜り衷心より厚く御礼申し上げます。また、各税理士会及び会員各位並びに日本税理士政治連盟におかれましては、税理士法改正の実現に向けて一致団結したご支援、ご協力を賜り深謝申し上げます。

 平成26年税理士法改正以降、DXの進展やデジタル社会形成基本法の制定など、コロナ禍による影響も相まって、経済社会全体にデジタル化の波が大きく押し寄せています。また、税理士試験受験者数の減少傾向に歯止めがかからず、試験制度の見直しに加え、税理士制度が国民・納税者により一層信頼される制度として、将来にわたり維持・発展していくための制度改革の必要性が高まっていました。

 今回の改正では、税理士の業務環境や納税環境の電子化といった、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、多様な人材の確保や、国民・納税者の税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から、数多くの重要な見直しが行われました。

 特に、税理士の業務のデジタル化については、改正電子帳簿保存法や電子インボイスへの対応等が喫緊の課題とされる中、税理士は、一事業者として、事業者を支援する専門家として、新しい時代に向けて先頭に立って納税者利便の向上と業務の改善進歩に取り組むとともに、テレワークやサテライトワーク等の業務執行の多様化に対応する必要があり、今回の改正は、その礎となる極めて意義のあるものであります。

 また、受験資格要件の緩和については、受験へのファーストタッチを早めるための改正であり、就職活動が始まる大学3年次までに会計学科目に合格している状況が増加することを想定し、就職先や職業の選択において、税理士事務所や税理士に目が向く効果も期待されるところです。他方、合格までの所要年数が10年とも言われる課題については、本会は次なる税理士法改正に向けた検討に既に着手しており、試験合格者の質の維持とのバランスも踏まえて、引き続き検討を重ねてまいる所存です。

 そのほかにも、税理士法人の業務範囲の拡充や懲戒逃れをする税理士への対応の強化など、税理士に対する信頼の向上を図るための改正項目が含まれています。

 税理士の果たすべき社会的役割は、税理士法第1条に規定する「税理士の使命」に基づいて、申告納税制度を支え、国民の納税義務の適正な実現を図ることにあります。この理念にそって、税務に関する専門家として研鑽を重ね、税理士業務を遂行していくことが、税理士の存在意義を更に高めるとともに、ひいては税理士の社会的信頼の向上につながることとなります。このことを会員一人一人が強く意識し、改正税理士法の適正な運用に業界を挙げて取り組んでいかなければなりません。

 会員各位におかれましては、今回の法改正を一つの契機として、税理士制度がより一層国民・納税者から信頼され、社会の期待に応え得る制度として高く評価されるために、専門家としての職責を自覚し、常に高度な使命感と倫理観を持って税理士業務を遂行されるよう、ご理解ご協力をお願いいたします。