令和2年度与党税制改正大綱について(会長コメント)

2019年12月12日お知らせ

日本税理士会連合会
会長 神津 信一

 令和2年度与党税制改正大綱において、本会の重要建議項目の実現は残念ながら見送られたものの、建議項目が数多く盛り込まれました。

 全てのひとり親家庭に対する公平な課税という観点から、寡婦(寡夫)控除の適用要件が見直され、未婚のひとり親について一定の要件の下で適用が認められるとされたほか、母子家庭と父子家庭に対する適用要件の統一化が図られることとなりました。これは時代に即した、本会の主張にあった改正であると評価するものです。

 連結納税制度については、制度の簡素化を図るため、企業グループ全体を一つの納税単位とする現行の連結納税制度に代えて、企業グループ内における損益通算を可能とする基本的な枠組みは維持しつつ、各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行うというグループ通算制度が創設されました。この制度では、個別申告方式を基本とするものの、研究開発税制等については調整計算が維持されるものです。この点については、「研究開発部門を分社化するかどうか等の企業グループの選択に対する税制の中立性が損なわれることのないよう制度設計をすべき」という政府税制調査会での本会の主張要望に基づいた措置となりました。

 オープンイノベーション促進税制が創設されることとなりました。これは内部留保の活用とベンチャー企業への出資によるオープンイノベーションの促進を政策目的として設けられた制度で、大企業等が一定のベンチャー企業の株式を取得し、事業年度末まで保有した場合、その株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得金額を上限に損金算入できるとされたものです。この措置は、企業の内部留保(特に約460兆円の現金預金)を活用し企業成長に結びつけることを狙いとしたものであり、本会の主張とも合致します。今後の詳細な制度設計について注視していきたいと思います。

 納税地の異動があった場合の振替納税手続の簡素化が図られましたが、政府税制調査会における本会の指摘がそのまま実現したものです。また、併せて振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出の電子化や電子帳簿等保存制度の見直しなどが図られましたが、時代に即した整備であると評価するものです。

 税理士会は、税理士法において、税制について建議することができると規定されており、税務の専門家団体として、国民・納税者の視点に立って建議を行うことは、税理士会に課せられた公共的使命であります。今後とも、あるべき税制の確立と申告納税制度の維持・発展のため、積極的に意見を表明してまいります。

関連情報
自民党ホームページ
令和2年度税制改正大綱(R1.12.12)
日税連ホームページ
日税連からの提案-税制建議