令和3年度与党税制改正大綱について(会長コメント)

2020年12月10日お知らせ

令和2年12月10日
日本税理士会連合会
会長 神津 信一

 本日、令和3年度与党税制改正大綱が決定され、税理士法の改正に関し、次のとおり記載されました。

 「税理士制度については、ウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会を見据え、税理士の業務環境や納税環境の電子化といった、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、多様な人材の確保や、国民・納税者の税理士に対する信頼の向上を図る観点も踏まえつつ、税理士法の改正を視野に入れて、その見直しに向けて検討を進める。」

 本会では、この内容を踏まえ、急速に進む経済社会・納税環境のデジタル化に対応した税理士制度の構築に向け、令和4年度の税理士法改正の実現に向けて取り組んでまいります。

 今回の大綱は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と社会経済活動との両立を図り、新しい社会をつくるため、わが国社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組みへの強力な推進や、機会の平等と公平の実現、簡素な制度の構築との基本的な考え方からとりまとめられております。とりわけ、納税環境のデジタル化に向けた諸施策は、電子申告・納税の普及をはじめ、税理士の関与があって初めて実効性ある施策になると考えます。引き続き、積極的に取り組んでまいります。

 このような基本方針の大綱に、本会の建議した項目がいくつか盛り込まれております。

 まず、中小企業者等の法人税の軽減税率の特例など令和3年3月31日を適用期限とされていた中小企業者等に対する各種の租税特別措置が延長されることとなりました。地域経済を支え、雇用を確保し、地方創生を担う中核となる中小法人にとっては、存続のための支援という視点が必要であることについて理解されたものと考えております。

 産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で、同法の事業適応(仮称)を実施する事業年度において特例対象欠損金額がある場合は、その特例対象欠損金額については、欠損金の繰越控除前の所得の金額(50%を超える部分については、累積投資残額に達するまでの金額)の範囲内で損金算入できることとされました。このコロナ禍による欠損金の取扱いの緩和措置は、今後の経済回復局面において投資を後押しするものとして評価するものです。

 納税環境整備のひとつとして、電子帳簿等保存制度が見直されることとなりました。経済取引に係る情報の電子化は、社会全体の生産性の向上に必要不可欠であり、ICT活用を税務面で進展させるために、この制度を普及促進することには大きな意味があることと考えます。データの適正性の担保とそれに基づく適正課税を念頭に置きつつ、納税者の利便性、事務負担やコストに配慮した制度となるよう、今後の検討を注視していきたいと思います。

 個人住民税における上場株式等の配当所得等に係る申告手続の簡素化として、令和3年分の確定申告から、個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について源泉分離課税(申告不要)とする場合に、原則として、確定申告書の提出のみで申告手続が完結できるよう、確定申告書における個人住民税に係る附記事項を追加することとされました。納税者利便に適った見直しであると考えております。

 税理士会は、税理士法において、税制について建議することができると規定されています。税理士は、税務の専門家として、常に納税者と接しており、税制が納税者、特に中小事業者に与える影響を深く認識する立場にあり、税制の建議を行うことは、税理士会に課せられた社会的使命であります。引き続き、あるべき税制の確立と申告納税制度の維持・発展のため、積極的に意見を表明してまいります。

関連情報
自民党ホームページ
令和3年度税制改正大綱(R2.12.10)
日税連ホームページ
日税連からの提案-税制建議