平成31年度与党税制改正大綱について(会長コメント)
2018年12月14日お知らせ日本税理士会連合会
会長 神津 信一
平成31年度与党税制改正大綱において、当会の建議項目が数多く盛り込まれました。
昨年大幅に拡充された事業承継税制について、資産管理会社の判定方法が見直されます。当会は、判定期間内に1日でも該当すると納税猶予取消しとなる現行制度について、設備投資のための借入等を萎縮させるおそれがある旨指摘していましたが、今回の見直しでこうした弊害が解消されることになります。
仮想通貨取引やシェアリングエコノミーなどの新たな形態に係る課税の適正化措置として、高額・悪質な無申告者を特定するための事業者への情報照会手続が整備されます。国税庁は、当会を含む関係者との丁寧な議論を積み重ねた上で11月に「仮想通貨関係FAQ」等を公表し、納税者自身による適正な納税義務の履行を後押しする環境整備を行ったところですが、こうした取組と相まって、適正・公平な課税が確保されることを期待いたします。
民法(相続関係)改正に伴う税制措置として、所要の改正が行われます。その内容は概ね当会の建議に沿ったものとなっており、詳細については、今後、通達等で明らかになっていくと考えられます。民法改正の趣旨を損なわず、かつ、公平・中立な課税となるよう求めるものであります。
eLTAXに障害が発生した場合に、総務大臣告示により申告等期限を延長する旨が明文化されます。国税については平成29年度税制改正で明文化されましたが、地方税については、各地方団体が条例で延長するとされているため対応が不統一でした。2020年4月からの大企業の電子申告義務化を控える中、適切な改正であると評価いたします。
このほか、未婚のひとり親への住民税の軽減措置、電子帳簿保存制度の要件緩和、税務手続のオンライン化の推進などについても、当会建議に沿った改正内容となっています。
なお、現行の小規模宅地等の特例に係る今後の見直しに当たっては、個人版事業承継税制の意義・効果の検証を含め、慎重かつ丁寧な議論を切望いたします。
消費税の軽減税率制度及び適格請求書等保存方式については、税務の専門家として、引き続きその円滑な実施に向けた準備を進めると同時に、あるべき税制の構築に向けた建議を継続してまいる所存です。また、税率引上げへの対応として検討されているポイント還元等については、その準備等のため事業者に過度の負担がかからないよう最大限の配慮が必要です。
税理士法には、税理士会は税制について建議することができると規定されており、国民・納税者の視点に立って建議を行うことは、税務の専門家団体である税理士会に課せられた公共的使命です。今後とも、あるべき税制の確立と申告納税制度の維持・発展のため、積極的に意見を表明してまいります。
- 関連情報
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- 自民党ホームページ
- 平成31年度税制改正大綱(H30.12.14)
- 日税連ホームページ
- 日税連からの提案-税制建議